【神経性過食症(過食症)の基礎知識】特徴・原因・治療法を解説
神経性過食症(Bulimia Nervosa)とは?その特徴的なサイクル
神経性過食症(Bulimia Nervosa)は、摂食障害の一種であり、「過食」とそれに続く「代償行動(排出行動)」が特徴的な病態です。
単に食べ過ぎるのではなく、以下のようなサイクルを繰り返します。
- 過食エピソード
自分の意思でコントロールすることが難しい過食衝動に駆られ、短時間で大量の食物を摂取します。
この間は、食べることへのコントロール感が失われています。 - 排出行動(代償行動)
過食後に感じる体重増加への強い恐怖や、体型・体重に対する過度のこだわりから、摂取したカロリーを帳消しにしようと以下のような行動をとります。- 自己誘発性嘔吐(おうと)
- 下剤や利尿薬の乱用
- 極端な絶食や激しい運動
このサイクルが週に1回以上、3ヶ月以上続くことが診断の一つの目安となります。
発症傾向と複雑な原因
神経性過食症は、一般的に20代の若年層、特に女性に多く見られます。
中学生や高校生よりも、大学生、就業者、主婦といった成人層に発症するケースが多いのが特徴です。
原因は単一ではなく、以下の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
- 文化社会的要因
「やせていること」を美とする社会的なプレッシャーや価値観。 - 心理的要因
自尊心の低さ、完璧主義、ストレス、抑うつ傾向、体型や体重に対する過度の関心。 - 生物学的要因
遺伝的素因、脳機能の変化(特に衝動性や報酬系のコントロール低下)など。
治療のアプローチと予後
神経性過食症の患者さんは、多くの場合、自身の状態への認識があり、自発的に医療機関を受診することが比較的多いとされています。
🩺 主な治療法
個々の患者さんの状態や併存症に応じて、以下の治療法が選択・併用されます。
- 精神療法
- 認知行動療法 (CBT): 摂食障害の治療において特に有効性が示されており、過食や排出行動を維持している不適切な考え方(認知)と行動のパターンに焦点を当てて修正を目指します。
- 対人関係療法 (IPT): 人間関係の問題を解決することで、摂食障害の症状改善を図ります。
- 支持的精神療法、家族療法など。
- 薬物療法
- 過食や排出行動の抑制、また、高頻度で併発する気分障害(うつ病など)や不安障害の治療のために、**選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)**などの抗うつ薬が使用されます。
🏥 身体的・精神的な併存症
神経性過食症は、嘔吐や下剤乱用による電解質異常(低カリウム血症など)、歯のエナメル質の損傷といった身体的な合併症を引き起こす危険性があります。
また、気分障害、不安障害、アルコール依存症、パーソナリティ障害などの精神科的併存症も伴いやすく、これらの治療も同時に行う必要があります。
📈 治療の目標と予後
治療の目標は、症状の完全な寛解(回復)だけでなく、症状の軽減と、患者さんの社会生活への影響を最小限に抑えることです。
経過には個人差があり、治療を受けない場合でも一時的に症状が改善することもありますが、再発の可能性もあります。
そのため、継続的な治療とフォローアップが回復への鍵となります。
専門機関への相談を
「過食と排出行為を繰り返してしまう」「体型や体重のことが頭から離れない」といった悩みは、決して一人で抱え込むものではありません。
早期発見と適切な治療が、回復への第一歩となります。
まずは心療内科や精神科、摂食障害専門の医療機関に相談することをお勧めします。
適切なサポートと治療により、症状は必ず改善し、生活の質を向上させることが可能です。💪







